2025.09.05 イベント実施報告

第14回「科学と社会」意見交換・交流会を東北大学理事・副学長(企画戦略総括)・プロボスト・CDOの青木孝文さんをゲストに迎えて開催しました(2025.9.5)

概要 Summary

 心豊かな社会をつくる会(代表:大草芳江)では、知的好奇心がもたらす心豊かな社会の創造にむけて、「科学・技術の地産地消」具現化のアプローチを多角的に模索するために、「科学と社会」をテーマに、各界から毎回多彩なゲストを迎え、宮城の日本酒を交えながら、ざっくばらんに政策立案に資する議論を行うニュータイプの意見交換会を定期開催しています。

 「科学と社会」についての捉え方は、立場によって異なります。議題は、ゲストが「科学と社会」をどのように捉えているかからスタートし、その切り口から、参加者同士で議論を行います。議論の様子は、市民参加型の政策立案プロセス検証の一環として公開することにより、広く社会と共有します。

 第14回は、東北大学で経営改革の中核を担う東北大学理事・副学長(企画戦略総括)・プロボスト・CDOの青木孝文さんをゲストスピーカーに迎えて9月5日、「国際卓越研究大学の舞台裏」をテーマに開催しました。

 日本の研究力が低下する中、挽回の切り札として岸田政権が立ち上げた10兆円規模の大学ファンド。その運用益で大学を支援する制度で、その支援金を最長25年間受け取ることができるのが国際卓越研究大学です。東京大学や京都大学など計10校が申請した中で、昨年度、その第1号に東北大学が唯一認定され、内外から大きな期待と注目を集めているところです。この国際卓越研究大学認定に向けて企画総括を担ったのが青木さんです。青木さんからは、国際卓越研究大学申請の狙いと認定の舞台裏、認定によって何が変わるのか等についてお話いただきました。

 今回も大学・研究所や企業、行政、ジャーナリスト、NPOや市民など、会場いっぱいとなる多様な立場の方からご参加いただき、これからの日本の大学のあるべき姿や、大学と地域・社会との関わり等について、予定時刻を大幅に超え活発な議論を行うことができました。参加者からは「初めて聞けた話も多く、舞台裏まで知ることができ、非常に有意義だった」「具体的な施策だけでなく、根底にある考えまで直に聞くことができ、理解が深まった」「改革への強い姿勢に勇気づけられた」といった声が多数寄せられました。

 今回の意見交換会は、大学が直面する課題や未来への挑戦を共有し、今後の大学および地域の方向性を考える貴重な機会となりました。ご多忙にも関わらずゲストスピーカーをお引き受けいただき深夜まで議論にお付き合いくださった青木さん、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。なお、今回は定員を超える多数の申し込みがあり、お断りせざるを得なかった方が多数いらっしゃいましたこと、お詫び申し上げます。

 議論の様子は、市民参加型の政策立案プロセス検証の一環として無記名で議事録を作成し、以下に概要を公開します。

開催概要

【名称】第14回「科学と社会」意見交換・交流会
【主催】心豊かな社会をつくる会(代表 大草よしえ)
【日時】2025年9月5日(金)19:00~21:00
【場所】綴カフェ(仙台市青葉区北目町4-7 HSGビル1階https://tsuzuri.jp/
【費用】3,000円(綴カフェのオードブルと宮城の日本酒の実費です)
【ゲスト】青木孝文さん(東北大学理事・副学長(企画戦略総括)・プロボスト・CDO)
[略歴](あおき・たかふみ)1965年宮城県石巻市生まれ。東北大学大学院工学研究科修了。専門はコンピューター工学、生体認証など。2002年東北大学大学院情報科学研究科教授を経て、2012年から副学長、2018年理事を兼務。企画戦略を担うプロボストを務める。

議事録(概要)

ゲストの青木孝文さんによる講演要旨
「東北大学が目指す国際卓越研究大学とは?」
青木孝文さん(東北大学理事・副学長(企画戦略総括)・プロボスト・CDO)

 講演ではまず、日本の研究力の国際的地位低下が指摘されました。論文引用数などの指標によるランキングで、日本は近年大きく順位を下げ、現在はイランを下回る世界13位にとどまっています。背景には国立大学法人化以降の制度的課題があるとされ、研究力立て直しのための抜本的対策の必要性が強調されました。

 その一つが、政府による10兆円規模の大学ファンドです。運用益を研究に充てることで、大学が自立的に資金を活用できる仕組みであり、これが国際卓越研究大学の目的であると説明がありました。東北大学はこの仕組みを最大限活かすのみならず、日本の大学が世界で競争力を持てるよう、会計制度改革などの規制改革を国に積極的に提案し、新しい成長モデルを先導していることが語られました。また、同大学が第一号として認定された背景には、震災後に培われた全学的な一体感と、総長交代後も変わらない改革計画の継続性が高く評価されたことも紹介されました。

 そして、研究大学としての事業拡大により、人口減少が進む東北の地において「知の拠点」として3000億円規模の事業体へと成長する決意が語られました。そのための体制強化計画では、東北大学の革新と挑戦の歴史を活かしビジョンと計画をナラティブに語ることの重要性や、マインドセットとシステム(仕組み)の変革を両輪で進めてきた経緯などが、裏話を交えて紹介されました。特に人材育成については、若手研究者が挑戦できる仕組みづくりや、世界から優秀な人材を積極的に招く取り組みが強調され、国際採用や新しい研究体制の導入など、日本の大学の未来をリードする試みが既に動き出していることが示されました。

 質疑応答では、基礎研究の重要性、支援期間終了後の財源確保策、AIの進展など、多岐にわたるテーマについて活発に意見交換が行われました。青木さんは「自由度の高い資金と大学の自主性・自律性こそが研究力を伸ばす鍵」と強調し、参加者は熱心に耳を傾けていました。その後も予定時刻を大幅に超え、深夜まで議論が続けられました。大変お忙しい中、青木さんも皆さんも最後まで議論にご参加くださり、誠にありがとうございました。


議論のようす(一部抜粋)

Q1. 基礎研究の継続や自由な研究環境の確保はどう考えているか。人文社会系の研究も十分に守られるのか。

A1. 日本では短期的な成果を求める制度が研究力低下を招いてきた。重要なのは、大学の自律的運営とそれを支える自由度の高い資金であり、長期的に腰を据えて研究できる環境整備が必要である。

Q2. 大学ファンドの支援が最長25年で終了した後、財源はどう確保するのか。また、成果がすぐ出ない基礎研究をどのように支えるのか。

A2. 会計制度の改定により、大学が純資産を蓄積・運用できる仕組みを整備している。寄附や産学連携収益も含めて積み立て、運用益を研究に充てることで持続的な基盤をつくる。人文社会系も含め、多様な分野を大学の裁量で支援していく。

Q3. 将来的に東北大学からノーベル賞受賞者が出る可能性はあるか。

A3. 日本の研究環境は厳しい。だからこそ国際卓越研究大学として研究者が自由な発想で挑戦できる環境をつくることが重要である。

Q4. 急速に進化する生成AIに大学としてどう対応するか。

A4. 生成AIは特に人文科学系を含め広い領域に大きな変革をもたらす可能性がある。今回の資金でAI of Scienceにも積極的に挑戦する。

Q5. 国立研究機関との連携をどう強化していくのか。

A5. クロスアポイントメントなどを進めている国立研究所もある。国際卓越研究大学として自由度高く投資することが可能になったため、より積極的に連携を進めていきたい。


宮城の日本酒

 ざっくばらんな意見交換を促進することを目的として、季節の限定酒をご用意しました。なお、以下は用意した日本酒の銘柄、造り、使用米、精米歩合、製造年度を示しています。

1.萩の鶴 純米大吟醸 山田錦 山田錦35% 6BY
  栗原市 萩野酒造 今年も二年連続全国新酒鑑評会金賞受賞の純米大吟醸

2.黄金澤 純米大吟醸 斗瓶取り 山田錦40% 5BY
  美里町 川名商店 全国新酒鑑評会金賞受賞酒 超限定当店オリジナル

3.あたごのまつ 大吟醸 鑑評会出品酒 山田錦40% 6BY
  三本木 新澤醸造店 全国新酒鑑評会優等賞     

4.宮寒梅 純米大吟醸 醇麗純香 ひより・美山錦35% 6BY
  大崎市 寒梅酒造  全国新酒鑑評会出品酒 特約店酒

5.DATE SEVEN SEASONⅡ episodo4 山田錦48% 6BY
  「浦霞 Style 伝説の海ボトル」「伯楽星 Style 大地の進化ボトル」
  同じ精米の米で 蔵違いの飲み比べ

6.山 和 純米吟醸 photo 山田錦50% 6BY
  加美町 山和酒造 純米大吟醸と同じ仕込で造る純米吟醸 純米大吟醸とは精米
  と酵母違い photoはイタリアの有名ソムリエが命名した 特約店酒

7.ZAO 純米吟醸 吟のいろは50% 6BY
  白石市 蔵王酒造 宮城の新し酒米 吟のいろはで造る 特宅店酒

8.乾坤一 特別純米 神力 神力55% 6BY
  村田町 大沼酒造店 契約栽培米米シリーズ 明治の米 神力で造る限定酒