令和5年第3回定例会 10月11日
決算等審査特別委員会
心豊かな社会をつくる会 大草よしえ
イノベーションにつながる
科学教育
心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。私からは、イノベーションにつながる科学教育という観点から、決算年度の取組について、伺って参ります。
天然資源のない日本が、これから科学技術立国として生き残っていくには、イノベーションが必要不可欠です。イノベーションの基盤として、昨今はIoTやAIといったテクノロジーがほぼすべての分野に浸透し、今後ますます浸透していきます。そして、これらのテクノロジーを使いこなすためには、科学教育が必要不可欠です。私も「科学・技術の地産地消」と銘打ち、地域の資源を活用しながら教育、研究、産業のエコシステムを形成することが重要と考えておりますので、仙台市の「スタートアップ・エコシステム拠点形成事業」などの取組は、非常に重要であると考えています。
政府も近年スタートアップ支援に力を入れ始めたところで、国が旗を振っている間に推進することは大切なことではありますが、国の支援策依存となり、金の切れ目が縁の切れ目とならないよう、イノベーションが持続的・永続的に生み出されていく土壌を、この仙台の地で耕していく必要があると考えております。そのためには、外から人を呼ぶ発想だけでなく、この地で創造的人材を如何に育てられるかという発想が、同時に必要不可欠ではないかと考えます。
よく仙台では「頭脳流出」が問題だと言われておりますが、東北大学や支店経済などのおかげで全国から優秀な方々が集まってきており、もともと外から来た人が単にそのまま外へ出ていっただけで、本質的には頭脳流出ではなくプラスマイナスゼロであると、私は認識しております。そこで本当の意味で仙台が「頭脳流出」と言われるくらいに、仙台で創造的人材を育て、継続的にイノベーションが生まれるエコシステムをつくることなしに、仙台の未来の発展はないのではないかと考えます。地域への愛着を持って、きっちりと育てられた人であれば、たとえ外に出たとしても、ゆくゆくは成長して力をつけて地元に戻り、またイノベーションの種になる、本当の意味で、地域に貢献してくれる人材になるものと考えます。このように教育は、10年、20年先に花咲く領域だからこそ、長期的な視点に立ち、施策を実行していく必要があると考えております。
「仙台スタートアップ戦略」の人材育成について
このような観点から、まずは郡市長が会長を務めていらっしゃる「仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会」において令和4年度に策定された「仙台スタートアップ戦略」について伺います。この戦略には、「イノベーションの担い手であるスタートアップ企業を連続的に生み出す」ための戦略が書かれているものと理解しておりますが、このうち「連続的に生み出すため」の一番のベースとして必要不可欠と思われる人材育成に関して、令和4年度の取組状況をご報告ください。
科学的思考力育成の取組状況について
ご答弁ありがとうございます。起業家精神を育成するアントレプレナーシップが重要であることは重々承知しておりますが、「仙台スタートアップ戦略」に目指す姿として掲げられております「仙台・東北から世界を変えるスタートアップ」が生まれるためには、起業家マインドはあくまで前提条件であって、「世界を変える」には、イノベーションが不可欠であると考えます。
そもそもイノベーションは、圧倒的な科学的思考力なしには起こり得えません。このこと自体はおそらくすべての方から同意いただけるものと存じます。ただ、科学的思考力を身につけると言っても、それは一朝一夕には難しいものであります。なぜならば、ものごとへの興味・関心、つまり強い知的好奇心と、現象から因果関係を抽出する洞察力、そしてそれを論理的に考察する論理的思考力、これらを成長段階に応じて、適切な指導のもと鍛え上げる、膨大な積み重ねが必要だからです。つまり、下は幼児教育から、小中学校の義務教育はもちろんのこと、高校、大学、大学院での教育、さらには社会に出た後の弛まぬ研鑽まで、それぞれの成長段階において適切な指導のもと、先に述べた3つの要素を鍛え上げ、膨大に積み重ねていった先に初めて、イノベーションが生まれる可能性が出てくると考えます。
仙台市が直接的に役割を担っているのは義務教育ですが、義務教育において科学的思考力を養う領域は、縦割り的には、理科ということになるかと思います。ただ、一般的に理科教育の問題点を議論する時、どうしても単に理科の好き・嫌いで論じられることが多い傾向にありますが、問題の本質はそこではなく、繰り返しにはなりますが、知的好奇心、洞察力、論理的思考力という科学的思考力を養うことがその目的ですので、当然のことながら、理系・文系関係なく科学的思考力の育成は必要不可欠です。ましてや、今後ほぼすべての分野にますます浸透が広がるIoTやAIを使いこなすためには、たとえ文系であっても理科教育が今後ますます重要になると考えております。
一方で、仙台という土地を、科学という切り口で見ると、東北大学をはじめとする様々な高等教育機関や、産業技術総合研究所や理化学研究所といった国研など、ほぼすべての分野を網羅していると思えるだけの研究開発機関が、一通り揃う、非常に豊かな知的資源が揃っている土地です。これら地域の資源を最大限活用することで、先程申し上げたような科学的思考力を育成できるだけの教育システムの構築ができると私は考えており、ぜひそれを実現したいと考えております。
このような観点から、次に3点、決算年度の取組状況について、伺います。1点目は、義務教育における理科並びに科学教育の取組について、学校の中に限らず、科学館や天文台、野草園、動物園、水族館等々、仙台市の施設を活用した発展的な学習の取組がありましたら、それも含めてご報告をお願いします。2点目に、義務教育の範疇を超えて科学へと深化させる取組として、東北大学など地域の高等教育機関や研究機関等(仙台市外の団体)と連携した科学教育を行っていると伺っていますが、それらの決算年度の取組状況について、ご報告ください。3点目に、社会構造を根本的に変えていくテクノロジーであるIoTやAIを教育に取り込む事例がありましたら、ご報告ください。
科学的思考力を育成する指導体制を地域資源を活用しながら構築すべき
ご答弁ありがとうございます。ご答弁いただいたように、仙台市では、中学1年生は全員天文台に、中学2年生は全員科学館に行くわけですが、社会教育施設を活用し全員参加型の学校教育に繋げている取組は、政令指定都市のなかではほかに京都市しかないと伺っております。私も2010年度から2020年度まで科学館協議会委員を務めさせていただいた関係で、科学館は昭和27年の科学館の前身となる「サイエンスルーム」創設以来、実に70年以上も科学館学習が継続して実施されていることは承知しておりましたが、このように社会教育施設でありながら学校教育にも直結している理科教育は仙台の特徴的かつ重要な取組であり、仙台市にとって貴重な財産であると認識をしております。さらに近年では東北大学等との連携により科学への関心を深化させる取組が行われていることも非常に重要なことと認識しております。
現状として、只今ご答弁いただきましたように、学校における理科教育を学びの基礎としつつも、現在の体制で、やれることは最大限やっているものと理解はしておりますが、しかしながら科学的思考力を育成するという観点においては、これらの取組だけではやはり脆弱である、と認識をしております。仙台市では天文台と科学館に1回ずつ中学生全員が行く機会があって、もちろん1回でも行くか・行かないかでは大違いなのですが、先にも申し上げた通り、科学的思考力はたった1回だけでは身につくものではないためです。また、大学等との連携も、研究者たちの問題意識から働きがけがあり、仙台の知的資源を活かして科学への興味を深化させる取組であると高く評価できるものでありますが、一方で、大学の研究者たちも本来業務がある以上、片手間にならざるを得ないのが現状です。これらは大事なきっかけにはなるものの、科学的思考力を深めていけるだけの本質的な教育はないのが現状であると認識しております。
したがって、仙台がこれまで構築してきたこれら財産を礎として、仙台市の未来のイノベーションを担う人材を、ここ仙台から育てるべく、仙台市が主導して、長期的視点に立って、科学的思考力を育成するためのコンテンツ群の制作と、それに対する適切な指導ができる体制を整えるべきであると考えますし、またそれが可能なポテンシャルを仙台市は有しているものと私は考えております。
学校教育と最新科学をつなぐ科学館を最大限活用するアイディア
そこで、先日の分科会では、この現状に対して、どうすれば様々な大学や研究機関と連携のもと、科学的思考力を育成するためのコンテンツ群の制作と、それに対する適切な指導ができる体制を整えられるかについて、具体的なアイディアを提案させていただきました。
具体的には、様々な大学や研究機関と連携のもと、科学的思考力を育成するためのコンテンツ群を開発していくためには、科学者と対等に議論ができ、かつ科学的に本質的な理解ができるレベルの専門的人材、具体的には博士号取得者相当がそのラインと思いますが、そのような専門的人材を仙台市が直接採用し、まず手始めに、従来の縦割区分の教科に、昨今のテクノロジーに直結する「数理・データサイエンス・AI」を加え、科学的思考力を育成するためのコンテンツ群を制作するというものです。
ただし、それを学校教育の中で行うことは現実的ではないので、その拠点のひとつの例として、社会教育施設でありながら学校教育にも直結している、仙台市科学館を取り上げました。これまでお話してきた通り、仙台市の他の都市にはない特徴として、せっかく中学生全員が必ず1回科学館等に学習に来るチャンスがあるわけですし、かつ、せっかくナノテラスなどの最先端の科学・技術を、大学等との連携によって展示する取組を、ちょうど今月から始まる大規模リニューアルを機に、今後、さらに力を入れていくタイミングでもあるわけですから、そのせっかくの1回を呼び水に、さらに興味を持って「もっと深めたい」と思う中学生が、科学館等に何回も繰り返し通って深めていけるだけのコンテンツ群の作成と体制を、最先端の科学・技術をキャッチアップできる博士人材と、理科教育のプロである指導主事がタッグを組んで構築されては如何かと、ご提案させていただいた次第です。このようなアイディアに対して、科学館としてのご認識を改めて伺えますでしょうか。
科学的思考力を育成する指導体制を地域資源を活用しながら構築すべき
ご答弁ありがとうございます。ご答弁いただいたように、仙台市では、中学1年生は全員天文台に、中学2年生は全員科学館に行くわけですが、社会教育施設を活用し全員参加型の学校教育に繋げている取組は、政令指定都市のなかではほかに京都市しかないと伺っております。私も2010年度から2020年度まで科学館協議会委員を務めさせていただいた関係で、科学館は昭和27年の科学館の前身となる「サイエンスルーム」創設以来、実に70年以上も科学館学習が継続して実施されていることは承知しておりましたが、このように社会教育施設でありながら学校教育にも直結している理科教育は仙台の特徴的かつ重要な取組であり、仙台市にとって貴重な財産であると認識をしております。さらに近年では東北大学等との連携により科学への関心を深化させる取組が行われていることも非常に重要なことと認識しております。
現状として、只今ご答弁いただきましたように、学校における理科教育を学びの基礎としつつも、現在の体制で、やれることは最大限やっているものと理解はしておりますが、しかしながら科学的思考力を育成するという観点においては、これらの取組だけではやはり脆弱である、と認識をしております。仙台市では天文台と科学館に1回ずつ中学生全員が行く機会があって、もちろん1回でも行くか・行かないかでは大違いなのですが、先にも申し上げた通り、科学的思考力はたった1回だけでは身につくものではないためです。また、大学等との連携も、研究者たちの問題意識から働きがけがあり、仙台の知的資源を活かして科学への興味を深化させる取組であると高く評価できるものでありますが、一方で、大学の研究者たちも本来業務がある以上、片手間にならざるを得ないのが現状です。これらは大事なきっかけにはなるものの、科学的思考力を深めていけるだけの本質的な教育はないのが現状であると認識しております。
したがって、仙台がこれまで構築してきたこれら財産を礎として、仙台市の未来のイノベーションを担う人材を、ここ仙台から育てるべく、仙台市が主導して、長期的視点に立って、科学的思考力を育成するためのコンテンツ群の制作と、それに対する適切な指導ができる体制を整えるべきであると考えますし、またそれが可能なポテンシャルを仙台市は有しているものと私は考えております。
学都仙台ならではの知的資源を生かした人材育成の仕組みを構築すべき
今回は、あくまでひとつの例として、科学館を拠点とするアイディアを提案いたしましたが、科学館に限らず、仙台市には他にも礎となる様々な取組があるはずですから、公教育においてこのような考えで展開していくことが、他の都市にはない、学都仙台ならではの知的資源を活かした人づくりのやり方ではないでしょうか。さらに今後は、ナノテラスや国際卓越研究大学などといった、世界最高レベルの科学・技術がここ仙台に集結するという、またとないチャンスが到来するわけですから、このアドバンテージを本当の意味で最大限に活用し、「仙台・東北から世界を変えるスタートアップ」を持続的・永続的に生み出していくためにも、大学のシーズや人材を利用する発想のみならず、仙台市が主導して、そのもっと下の基盤から自ら生み出していく発想と、そのための人材育成の仕組みが、必要不可欠と考えます。このような考えに対して、最後に、郡市長からご認識を伺えますでしょうか。
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