2024.02.20 議会質問報告

【令和6年第1回定例会】国内外から選ばれる都市(半導体・人材育成について)

概要 Summary

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえは、定例会で毎回一般質問に登壇しています。このたびの令和6年第1回定例会では、昨今、デジタル社会の基盤としてその重要性が高まる「半導体」を切り口に、市長が施政方針で掲げる「国内外から選ばれる都市」に関して一般質問を行いました。国内外で今後益々人材獲得競争がし烈を極めると予測される中、「国内外から選ばれる都市」実現には高い教育水準が必要不可欠であることから、例えば、仙台から世界に挑戦できる学生向けの国際的なIoTものづくりコンテスト「国際イノベーションコンテスト」を活性化し、さらにスタートアップ支援事業との連携等で効果の最大化を図るなど、仙台ならではの知的資源を活かした人材育成の仕組みを構築すべきとの提言を行いました。今回も市長や当局からは前向きな答弁に加えて、具体的なアクションもいただけました(「国際イノベーションコンテスト」への「仙台市長賞」創設等)。以下に大草よしえの一般質問の録画中継(仙台市議会HPリンク)、質問内容及び市長等の答弁(全文)を掲載いたします。

録画中継はこちら

令和6年第1回定例会 2月20日 
本会議(一般質問)
心豊かな社会をつくる会 大草よしえ

国内外から選ばれる都市(半導体・人材育成について)

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。議長のお許しをいただきましたので、私からは郡市長が施政方針で掲げる「国内外から選ばれる都市」について、昨今、デジタル社会の基盤として、その重要性が高まっている「半導体」を切り口に、一般質問を行います。

教育水準の向上

 かつて日本が「半導体王国」や「電子立国」と呼ばれていた頃、日本の半導体生産量が世界シェアの半分以上を占め、半導体産業が、自動車産業と並んで外貨の稼ぎ頭だった時代が、かつてありました。その後、世界の半導体市場は拡大しているものの、日本の半導体の世界シェアは1988年頃をピークに、今では1割にも満たない存在へと、大きく低下しています。

 世界は今、従来の経済効率最優先のグローバリゼーションから、昨今の米中対立などの地政学的な要因や、パンデミックによるサプライチェーンの寸断などを契機に、半導体の生産を他国に依存すると、有事の際に経済が立ち行かなくなるとして、デジタル社会の基盤である半導体は、経済安全保障上の戦略物資と位置づけられるようになり、半導体の重要な生産基盤を自国で囲い込むブロック化へと、世界経済のレジームはシフトしています。

 さらに今後、生成AIやIoT、さらには量子コンピュータなどの社会実装が、データ処理量の飛躍的な増加と、半導体需要の爆発的な拡大をもたらすと予想される中において、半導体人材や、それらを活用するデジタル人材の需要は、増加する一途であり、人材獲得の国際競争は世界各地でますます激化していくものと予想されます。

 巻き返しを期す日本政府も「これが最後で最大のチャンス」と、経済産業省を中心に「半導体・デジタル産業戦略」を策定し、これまでにない予算規模で産業支援に力を注いでいます。そこで、日本の政策動向に加えて東北地域の取組状況や仙台市の課題点などを把握するために、東北経済産業局や宮城県、東北大学、東北経済連合会、さらにTSMCの進出先である熊本県などの関係者に、ヒアリングを行いました(Figure 1)。

Figure 1半導体受託生産で世界最大手のTSMC(台湾)が熊本県に建設した工場の視察及び熊本県庁ヒアリング

 半導体受託生産で世界最大手のTSMCの進出により、九州・熊本が盛り上がっていることが今、話題になっておりますが、熊本が選ばれた理由は、取引企業との関係性、その背景として豊富な水と用地、空港整備による輸送を基盤に、九州に“シリコンアイランド”と呼ばれる半導体関連産業の集積があり、関連企業や大学・高専・行政機関等が連携して協議会を立ち上げ20年以上にわたり一体となって人材育成等に注力してきた蓄積と、自治体もまた人材育成に予算を付けながら教育水準の向上に寄与している土壌も大きいと聞きました。

 ちょうど今、リスク分散の観点から、ここ東北にもチャンスが訪れています。東北は九州に次いで半導体関連産業の集積が進んでおり、水や用地も豊富なため、東北の優位性が活きるものと期待でき、今回の台湾の半導体受託生産大手PSMCの宮城県への進出も、その一環と捉えることができます。

 しかしながら誘致が伸びない大きな要因のひとつとして、東北は、集積はある程度は進んでいるものの、人材育成の脆弱性が指摘されており、そこで東北経済産業局の主導で、人材育成のための研究会が令和4年度から立ち上がりました。そこに、仙台市も入っていることは承知をしております。

 すなわち、人材育成の成否が、誘致の可否に直結すると言っても過言ではなく、今後、世界各国そして日本国内の地域間においても、人材獲得競争がし烈を極めていくものと予測される中、その重要性は今後ますます大きくなっていくでしょう。

 今回の施政方針において郡市長が掲げる「国内外から選ばれる都市になる」ためには、以上の観点から、高い教育水準が必要不可欠と考えます。郡市長は昨年、「科学技術を活かしたまちづくり」とも仰っていたので、そのような観点は含まれているものとは思いますが、このことについて改めて郡市長のお考えをお示しいただけますでしょうか。

国際イノベーションコンテストを活用するアイデア

 次に、そのための具体的なアイデアを議論するために、仙台市ならではの知的資源を活用する方策の一案として、半導体に関連するデバイスのひとつである、MEMSを取り上げたいと思います。

Figure 2半導体微細加工技術を用いて作成されたギア(左下)とダニ(右上)の電子顕微鏡写真

 MEMSとは「微小な電気機械システム」という意味の英語「Micro Electro Mechanical Systems」の略称で、半導体微細加工技術を応用し、情報処理を行う電子回路だけでなく、入力に用いられるセンサや、出力に用いられるアクチュエータ、あるいは微細構造体なども一体化したシステムです(Figure 2)。

 皆さんも必ずMEMSを持っていると思います。スマホに内蔵されて傾きを検知する加速度センサや、音声を拾うシリコンマイクなどが、MEMSです。MEMSは自然界の様々な現象を検知するセンサとして、私たちの身のまわりから産業界まであらゆるところで役に立っており、IoTのキーデバイスと言われています。そのMEMSの世界的権威が江刺正喜東北大学名誉教授です。

Figure 3エアバックに使用されるMEMS(加速度センサ)

 MEMSの技術は、自動車の排気ガス規制対応やエアバック、横滑り防止機能など、自動車の性能向上のために使われ発達してきました(Figure 3)。江刺先生の研究室には国内外からほぼすべての自動車会社が集まり、競合他社も一緒にオープンな環境で情報を共有するところから、競争力の高いものづくりが生まれました。

 MEMSをはじめ、仙台地域に蓄積された様々な分野における知的資源を最大限活かし、付加価値の高いものづくりを実現していくことを目的に、産学官で2004年に設立されたのが、「MEMSパークコンソーシアム」です。発起人の代表は当時の藤井仙台市長であり、仙台市も事務局として現在も運営に携わっていることは承知しております。

Figure 4国際イノベーションコンテスト(iCAN)世界大会のようす

 MEMSパークコンソーシアムの主な活動のひとつに、学生向けの国際的なIoTものづくりコンテスト「国際イノベーションコンテスト(略称iCAN)」による人材育成があります(Figure 4)。会員企業がスポンサーとなり、MEMSや開発費の一部、国内予選で上位入賞したチームには世界大会へ派遣する旅費まで拠出いただけるという、仙台から世界へ挑戦できる、大変素晴らしい大会です。その国内予選が東京ではなく仙台で行われているのは、まさに、江刺先生が仙台にいるおかげです。地元の中高生や大学生も国内大会で優勝し世界大会で上位入賞した実績があり、実は私も2021年に優勝チームとともに郡市長を表敬訪問させていただき、メディアにも取り上げていただきました。

 このような素晴らしい大会が2009年から仙台で開催されているにも関わらず、地元の小中高校大学生に、その存在がほとんど知られていないのは、あまりにも勿体ないのではないでしょうか。しかも、一昔前であればマイコンを活用してIoTアプリを開発することは敷居が高かったのですが、今では関連技術の汎用化が進み、アイデアさえあれば、比較的、容易に形にできる時代になっています。

 政策にはお金をかける方策と、かけないで知恵を絞る方策があると思いますが、まずは、お金をかけなくても効果最大化を図れる方策があるものと考えます。例えば、『学都仙台・宮城サイエンス・デイ』という科学イベントでも、郡市長から応援メッセージや仙台市長賞の交付をいただいて、仙台市として全面的に応援いただくことで、仙台市内の小中学校に全児童・生徒分のイベントチラシを配布させていただいており、そのおかげで一定の認知度と成果が得られているものと認識をしております。同様に、iCANにも仙台市がもともと事務局として入っているのでしたら、郡市長からの応援メッセージや仙台市長賞の交付、それを褒め称えて内外にPRすることによって、仙台市の小中高校大学生にとって憧れの大会となるような位置づけをつくることは可能と考えますし、それだけでも効果的な取組になるのではないでしょうか。

 さらに、アイデアを形にするだけでなく、形にしたアイデアをプロトタイプとして世の中に見せていく、その先の道筋を見せるための工夫として、例えば、経済局が現在力を入れているスタートアップ支援と接続するなど、今、この地にある資源を最大限活用して有機的に繋げることで、効果最大化を図る工夫の余地は大いにあるものと考えます。

 「選ばれる都市」を目指し、外に向かってPRしていく以前に、地元がまず、盛りあがることなしに、その評判が外に伝わることはありえません。あくまで一案ではありますが、このように仙台市も事務局として携わっているiCANを起点に人材育成を盛り上げていく方策のアイデアについて、当局、そして郡市長としては、如何お考えでしょうか。また、これに関連してお考えの方策等はありますでしょうか。

 今後も、「学都仙台ならではの知的資源を最大限に活かした人材育成の仕組みの構築」という観点から質疑を重ね、本市のプレゼンス向上につなげて参りたいと存じます。

 以上で、私からの一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

答弁 Answer

郡市長

 只今の大草よしえ議員のご質問にお答えを申し上げます。国内外から選ばれる都市について、でございます。本市では、新しい時代を生きる子どもたちに必要となる資質、それからまた能力を育むため、子どもたちの基礎学力とその才能を伸ばし、社会性などを育むことができるように、「確かな学力の育成」など、教育委員会とともに様々な取り組みを行って参りました。とりわけ、理科教育においては、最先端の科学技術を身近に感じて、そして体験する機会を創出し、学都仙台の知の力を活かしていくことが必要であり、東北大学と連携したサイエンススクールのように、仙台の多くの子どもたちが参加をし、科学技術に触れ、学んでいるところでございます。本市がまちの魅力を高め、国内外から選ばれる都市となるためには、大学等との高等教育機関や研究機関、企業との協働により、まちをあげて、未来のつくり手となる人材の育成が重要でありますことから、引き続き本市の特色や強みを活かした教育環境の充実に努めて参りたいと存じます。

経済局長

 私からは、iCANを起点とした人材育成についてお答え申し上げます。iCANは、MEMSデバイスを活用した国際的なアプリケーションのアイデアコンテストでございまして、学生が仙台から世界にチャレンジできる大変貴重な機会となっております。少子化や人材不足が課題となる中、若者にさらなる成長の機会を提供し、MEMSやIoTに通じた高度人材を育成していくことは、本市経済の活性化や企業誘致を進めていく上でも重要な取り組みであると認識しております。今後、地域の関係者とさらに連携を図りながら、iCANの取り組みをさらにPRし、認知度を高めていくとともに、スタートアップ支援事業等との連携を図りながら、例えば、iCANにおけるアイデアの事業化を支援するなど、この取り組みを地域全体で活かしていくことができるよう、具体的な取り組みを進めて参りたいと存じます。

追記(2024年4月14日)

 大草よしえによる上記の一般質問を契機に、国際イノベーションコンテスト(iCAN)の取り組みをさらにPRし認知度を高めていくために、iCAN'24から「仙台市長賞」が創設されました。