他都市の先進事例から、仙台・東北のDX化のあり方を考える

　「仙台市×東北大学スマートフロンティア協議会」のトークセッション「他都市の先進事例の紹介を通じ、今後の仙台・東北のDXの方向性を考える」では、はじめに郡市長から、仙台市が産官学連携で取り組むデジタル田園都市国家戦略構想交付金やスマートシティ関連の事業について、オンライン診療カー実証実験など、７つの事例報告がありました。

　次にデジタル庁デジタル統括官の村上敬亮さんからは、人口減少局面ではサービス密度が低下することに起因して、供給が効率を維持するためには、供給が需要に合わせる経済へシフトせざるを得ず、その実現にはデジタル基盤とデータ共有が必ず必要であることや、「デジタル×データ×みんなのやる気」をどうやって掛け算していくかが問題だといった指摘がありました。

　　続いて、デジタル庁企画調整官の谷内田修さん（前 前橋市スマートシティ推進監）からは、前橋市がマイナンバーカードの本人確認を電子認証の基点にした上で、匿名性を担保しながら、官でも民でも使える共通のIDを官民共創で開発した事例について紹介がありました。これにより前橋市では、利用者が共通IDをスマホに搭載でき、そこに法的根拠のある電子証明書が発行され、本人の同意に基づき、サービス提供者から個別最適化したサービスを受けられるという仕組みです。

　これら前橋市の官民共創の取組が、地元への愛と志ある民間主導で推進されている点も非常に印象的で、共通ID発行やデータ連携基盤の運用を行うために官民共創で設立した株式会社では、「得、便利さ」だけでなく、ビジョンを共有し、例えば会社の純利益の1％をまちづくりに還元したり、子ども食堂を支援したりといった「徳」を積む仕組みがある点にも深い感銘を覚えました。ファシリテーターの舘田あゆみ先生から、このように興味深いお話を引き出していただき、２時間あっという間の非常に興味深いセッションでした。

【追記】トークセッションのアーカイブ動画が「せんだいTube」に公開されました
https://www.youtube.com/watch?v=5pDVplJiCYo

そもそも「DX」とは？

　「DX」はここ10〜20年、産業界でよく聞かれるキーワードで、最近は行政・自治体関係でもよく言われるようになりましたが、そもそも「DX」とは「Digital Transformation」の略です。では、なぜ「DT」ではなく「DX」なんだろう？と、素朴な疑問が湧くわけですが、接頭語の「trans-」には「on or to the far side of something（向こう側に横切る）」という意味があるので、「Transformation」の略語は「X」が最適、ということで「DX」になったようです。それでは「Transformation」の意味は？と言うと、「変化、変形、変質」という意味で、昆虫の「変態」や遺伝学の「形質転換」にも使われる単語です。

　つまりDXとは、「デジタルによる変革」を意味する言葉ですので、単なる「Digitization（情報のデジタル化）」や「Digitalization（業務のICT化）」にとどまらす、それらを前提にしたものです。さらに先述のtrans-の意味を拾って「組織内を”横断した”システム構築」とか「既存の価値と新たな価値の”クロス”」といったニュアンスが入るケースも多いような印象です。

　念のため、DXの定義を探したところ、DX提唱者のエリックストルターマン氏（当時ウメオ大学教授）は2004年の発表当時、「The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.」と言っています。ただ、最近は当初のコンセプトとは異なる使われ方が増えているということで、DXの定義の改訂が行われたようです。

■DXの定義の改訂
https://www.dxlab.jp/new-dx

　日本においては、行政・自治体におけるDX推進計画を、総務省が以下のように策定しています。

■自治体デジタル・トランスフォーメーション（DX）推進計画
https://www.soumu.go.jp/.../s-news/01gyosei07_02000106.html

これからDXについても基本的なところから勉強し調査研究を進めながら、DX推進調査特別委員として建設的な提案ができるよう努めて参りたいと存じます。