令和5年第4回定例会 12月15日
本会議(一般質問)
心豊かな社会をつくる会 大草よしえ
科学技術を
いかしたまちづくり
心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。議長のお許しをいただきましたので、私からは郡市長の掲げる「科学技術をいかしたまちづくり」、総合計画でいう「世界に発信できる東北発のイノベーション創出」について、一般質問をいたします。
「科学技術をいかしたまちづくり」を実現するには、まず、本市の知的資源を俯瞰的に認識した上で、それら資源を如何に最大限活用しビジョンを描けるか、そして、そのビジョンを多様な機関と共有し、協働しながら具現化していく、強い信念とリーダーシップが必要不可欠であると考えます。
我が会派「心豊かな社会をつくる会」でも、「科学・技術の地産地消」と銘打ち、地域にある知的資源を地域の教育、研究、産業に還元するエコシステムの実現を目指しておりますので、議員当選以来、数ヶ月にわたり、仙台・宮城の知的資源のヒアリング調査等を進めて参りました。このうち今回は、特に、仙台市に関係する科学・技術分野の資源として、理化学研究所の仙台拠点と、ドイツのフラウンホーファー研究機構について伺います。
仙台市内に立地している国立研究機関との関係性
はじめに、理化学研究所からいただいた声を取りあげます。皆様ご存知かとは存じますが、理化学研究所、通称理研は、約3,000人の研究員を擁する日本最大級の公的な研究機関です。今から遡ること110年前、科学技術こそが産業振興の基礎であり、また国力の源泉であるという認識が世界的に高まる中、日本人による開発型ベンチャー企業・スタートアップの先駆者とされる高峰譲吉(たかみね じょうきち)や渋沢栄一らの提唱により、1917年、発足以来、理研は日本の科学技術をリードしてきました。湯川秀樹や朝永振一郎など、ノーベル賞につながるような学術研究を根幹としながらも、理研独自の発明を自ら工業化し、研究成果を日本の産業発展に役立て、それがリコーや理研ビタミンなど、今日の大手企業に受け継がれてきた歴史は、私が申し上げるまでもございませんが有名です。最近では、仙台市も「ナノテラス」のトライアルユース事業で使用している兵庫県播磨の大型放射光施設「Spring-8」や、神戸市にあるスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」、113番目の新元素「ニホニウム」発見などが、理研の研究としてお馴染みかと思います。
その理研が、ここ仙台市に研究拠点を構えていることは、残念ながら、一般には知名度があまり高くないと聞いております。理研の本部は埼玉県の和光にありますが、実は地域展開の第1号がここ仙台市で、東北大の優れた研究ポテンシャルと理研の研究ポテンシャルを融合して独創的研究を進めようと、1990年、光の新しい利用分野開拓を目指した研究が、青葉山、今で言う「ナノテラス」が立地する東北大学サイエンスパークの奥にある土地で、始まりました。そこに実は、仙台市も深く関係しておりまして、土地を宮城県と仙台市で 1/2 ずつ無償貸与し、建設費 も17.2 億円のうち16 億円を宮城県と仙台市とで 1/2 ずつ出資しておりますので、仙台市としても当時は大きな期待があったものと推察され、また今でも仙台市は土地の無償貸与を継続していると聞いております。
Figure 11990年、理化学研究所の仙台拠点開設
(理化学研究所広報誌より該当部分抜粋)
ところが今、時代の流れで、全国10ある理研の拠点のうち、すでに大阪と名古屋は閉鎖の方針が決定し、仙台の拠点も閉鎖されるかどうかの瀬戸際に立たされています。そんな中、理研本部の経営企画部長の方から「これから理研の7カ年の中長期計画を策定するにあたり、仙台に拠点を構え続ける意義や役割を再定義できなければ、理研仙台の閉鎖もありうる」とお話をいただきました。そこで理研からのご依頼で、仙台市との意見交換の場をお繋ぎし、さらに理研本部や東北大、仙台市、宮城県、東北経済産業局など、リサーチコンプレックス関係者との意見交換の場を私の方でセッティングさせていただきました。理研仙台からは「せめて仙台市から、我々理研のような国研が『仙台にいてくれてありがとう』と位置付けてくれさえすれば、積極的に動けるのに」とのご要望を伺っております。仙台市はリサーチコンプレックスの形成を重点プロジェクトとして推進しているにも関わらず、あまりにも関心を持たな過ぎではないでしょうか。
Figure 2リサーチコンプレックス関係者との意見交換会
(心豊かな社会をつくる会主催。開催報告ページはこちら)
そこで質問ですが、理化学研究所も含めて、仙台市内に立地している国立研究機関とは、現在どのようなやり取りがありますか?また、理化学研究所の仙台拠点は、今、このまま放おっておけば、仙台からの撤退も十分ありえますが、今後どのような関係性を考えていますか?さらに、理研の他の国研も、今後、同様の整理縮小がありうると考えられますが、これを機に、仙台市として仙台・宮城にある研究機関等の知的資源を『仙台・宮城における科学・技術ポートフォリオ』として積極的に位置付け、多様な産学が集い異分野融合を促す、イノベーション・エコシステム創出にむけた戦略の策定に本市として積極的に活かすべきと考えますが、仙台市としての考え方をお聞かせいただけますでしょうか?
海外の研究機関との関係性
これに関連して、国内のみならず、海外の研究機関として、ドイツのフラウンホーファー研究機構からいただいた声を、次に取りあげます。
フラウンホーファー研究機構は、産業に直接役立ち、社会に貢献する応用研究を行うことを目的として1949年、ドイツに設立された、ヨーロッパ最大の公的な研究機関です。アカデミアと産業の垣根は自然には越えられず、知の移転の難しさがイノベーション・エコシステムの大きな課題となっておりますが、好調なドイツ経済を支えるイノベーション・エコシステムにおいて、フラウンホーファーがアカデミアと産業界、特に中小企業との「橋渡し」機能を果たしており、昨今では「フラウンホーファーモデル」として、日本の科学技術・イノベーション政策の議論の中でも注目されています。
ご存知の通り、仙台市はフラウンホーファー研究機構と2005年から10年間、協力協定を締結していました。元々の経緯は、MEMS研究の第一人者である江刺正喜東北大学名誉教授の繋がりと働きかけによるものでしたが、10年間にわたってシンポジウム開催などの活動を行った結果、そのつながりが、その後の東北大学 材料科学高等研究所でのフラウンホーファープロジェクトセンター設立などに繋がって関係性が深化し、現在では東北大学マイクロシステム融合研究開発センターがフラウンホーファーのエレクトロ・ナノシステム研究所(略称ENAS)と協力協定を締結し、引き続き、シンポジウムを年1回、仙台市で開催しています。
Figure 32005年、フラウンホーファー研究機構と仙台市が
協力協定締結
実は、日本でのフランフォーファーシンポジウム開催は仙台市のみということで、ぜひ仙台市との関係やその後の展開について知ってもらいたいと、東北大学からお声がけいただき、先月開催された「フラウンホーファーシンポジウム in Sendai」において、フラウンホーファーのENAS所長や研究者に直にヒアリングをさせていただく機会を頂戴しました。ここでは詳細を割愛しますが、中小企業も含めたイノベーション創出のために日本がフラウンホーファーを参考にしている理由がよくわかり、私自身も大変勉強になりました。さらに、驚いたことに、ENASの所長が、「現在、日本にはフラウンホーファーの研究拠点がなく、拠点を構えるとすれば第一候補は仙台だ」と仰っていたので、「なぜ東京や関西など他都市ではなく仙台なのですか?」と伺ったところ、「20年以上、顔の見える交流が続き、信頼関係があるからだ。その一言に尽きる」との返答でした。「大切なのは人であり、信頼関係であって、特に国際連携であれば尚更だ」とのことです。
Figure 4第14回フラウンホーファーシンポジウムin仙台」で
関係者と意見交換
しかしながら、件のフラウンホーファーシンポジウムでは、宮城県が熱心にフランフォーファー関係者と意見交換を行っていたのに対し、仙台市の行政サイドからは出席者が誰もおらず、大変残念に思いました。企業誘致の大きな武器となることが期待される国際的な研究機関が、せっかく仙台市を選んで来てくれているにもかかわらず、交流すらしないのは、機会損失ではないでしょうか。
何でもゼロからつくることは大変なことです。理研の例もそうですが、国内だけでなく海外も含め、過去の歴史や関係性等もイノベーション・エコシステム形成のためには積極的に活用すべきと考えますし、郡市長の仰る「国際的プレゼンスを高め、世界から選ばれる都市を目指す」のでしたら尚更、国際的な機関も含めて誘致しようとする積極的な姿勢が必要と考えますが、それらは仙台市のミッションには含まれていないのでしょうか?
過去構築した国内外の研究機関等との関係性も新施策に有機的に再構築すべき
もちろん、事業の見直し自体は、その時々の判断で必要であり、常に新しいことにチャレンジすべきとは当然思います。しかしながら、単に、終わったら終わりっぱなしではなく、その取組によって得られた知見や関係性などが、今回取り上げた例の他にも、本市の資産として残っているはずです。それが今、ナノテラスを核としたリサーチコンプレックス形成といった新たなミッションが加わり、環境も変化するで、また改めて位置付けることにより、大きな財産になっていくものと考えます。逆に、今から新しくつくろうと思っても、なかなかつくれない本市の財産だと思います。
Figure 5フラウンホーファー研究機構の関係者とナノテラス視察
過去これまで取り組んできた事業が、たとえ別のニーズから始まった経緯があったとしても、もともとの長期的ビジョンでは共通部分があるはずですから、当然そのレベルでの認識でもって「世界に発信できる東北発のイノベーションの創出」という新しいミッションについても、活かせるものはきちんと活かし、有機的に繋げて再構築すべきと考えます。このような考え方について、最後に郡市長のご認識を伺えますでしょうか。
以上で、私の一般質問といたします。ご清聴いただきありがとうございました。
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