令和7年第1回定例会 3月3日
予算等審査特別委員会(経済費)
心豊かな社会をつくる会 大草よしえ
「スタートアップ支援」「MICE推進」
私からは、第6款 経済費のうち、「スタートアップ支援」と「MICE推進」の2点について、伺います。
(1)スタートアップ支援(令和7年度予算:4億7,521万円)
① 「仙台グローバルスタートアップ・ハブ開設」(新規事業)
令和7年度施政方針では、「スタートアップを新たな成長エンジンにする」として、「グローバル・スタートアップ都市・仙台」が掲げられ、「起業家・スタートアップ支援」に、重点的に合計4億7,521万円の予算が配分されております。このうち8,000万円の予算が計上されている新規事業の「仙台グローバルスタートアップ・ハブ開設」について伺います。
はじめに、この事業を新しくつくった目的と、8,000万円という予算を計上した経緯をお示しください。
答弁 Answer
経済局 スタートアップ支援課長
仙台グローバルスタートアップ・ハブは、世界へ挑戦するスタートアップに対する支援と、海外から仙台での起業を目指す外国人や留学生に対する支援を両面で実施することで、本市のスタートアップ・エコシステムのグローバル化を目的とするものです。主な内訳につきましては、海外展示会への出展や現地での商談獲得などの伴走支援に4,200万円、海外展開を目指すスタートアップへの相談対応や研修に2,000万円、スタジオの多言語対応やスタートアップビザ利用者への支援に1,000万円などでございます。
本市では、特に震災後から社会起業家を中心に起業が増加し、近年では、東北大学発ベンチャーの輝翠TECH代表のタミル・ブルームさんのように、農業など地域課題を解決するグローバルなスタートアップ企業が生まれたことは、非常に喜ばしいことと存じます。一方で、スタートアップがめでたく成長し、では「次はグローバルに展開しよう」となればなるほど、よほど特別な理由がない限り、ビジネス上有利で、飛行機の国際線も桁違いに多い、東京へ行こうと思うのが、普通だと思います。そのような現実を踏まえて、仙台市が令和7年度新たに8,000万円の予算をかけて、「仙台グローバルスタートアップ・ハブ」を開設する意義とは何でしょうか。伺います。
答弁 Answer
経済局 スタートアップ支援課長
人口減少が加速する中、若者に選ばれる都市になるためには、仙台・東北の地から世界に向けて挑戦できる環境の充実が重要と認識しており、海外展開への支援と、海外からの誘致の、双方向の取り組みが必要でございます。本事業を通じて、留学生や外国人も含めた若者の起業と定着に向け、スタートアップの成長段階に応じた、きめ細やかな支援を実施し、世界で活躍するスタートアップの輩出につなげてまいります。
ぜひ本市には地に足の着いた、仙台市の実態に合った取り組みを、着実にお進めいただくことをお願いしたいと存じます。
② スタートアップ支援と「国際イノベーションコンテスト」の接続
続けて、スタートアップ支援事業に関連し、以前取り上げた「国際イノベーションコンテスト」事業との接続について伺います。
令和6年第1回定例会では、イノベーションにつながる次世代人材育成をテーマに一般質問を行い、IoTやAIのキーデバイスであるMEMSデバイスを用いたIoTアプリケーション試作の国際コンテスト「国際イノベーションコンテスト」、略称iCANが、IoTという言葉がまだ一般的ではなかった15年も前から、東京ではなく仙台で国内大会が開催されていることを取り上げました。
そして本市も事務局として携わっているiCANを起点に、仙台から次世代人材育成を盛り上げていく方策として、iCANへの「仙台市長賞」創設などによる認知度向上策や、本市が近年力を入れているスタートアップ支援事業との接続といった方策を昨年の議会で提案させていただきました(参照:https://kokoroyutaka.net/parliament/20240220.html)。
昨年のご答弁を踏まえ、当局からは早速、今年度のiCANで仙台市長賞創設や市長の応援メッセージ、iCAN参加者への本市スタートアップ支援事業の紹介といった対応をいただきました。短い準備期間であったにも関わらず、迅速にご対応いただき、ありがとうございました。

【写真1】一般質問をきっかけに新設された「国際イノベーションコンテスト」仙台市長賞授与のようす(2024年4月、せんだいメディアテーク)
さて、その一般質問で経済局長からいただいたご答弁では、「今後、地域の関係者とさらに連携を図りながら、iCANの取り組みをさらにPRし、認知度を高めていくとともに、スタートアップ支援事業等との連携を図りながら、例えば、iCANにおけるアイデアの事業化を支援するなど、この取り組みを地域全体で活かしていくことができるよう、具体的な取り組みを進めて参りたい」とご答弁をいただきました。その後、具体的な取り組みの進捗については如何でしょうか。特に次年度にむけた進展がございましたら、具体的にお示しください。
答弁 Answer
経済局 スタートアップ支援課長
iCANの認知度向上に向けましては、今年4月の開催について、スタートアップのコミュニティや地元のIT関連企業の団体などを通じたPRを行ってまいります。また、コンテストに参加する学生に対して、仙台スタートアップスタジオの無料相談の活用を促すなど、iCANで生まれた優秀な学生のアイデアの事業化に繋がるよう努めてまいります。こうしたことを通じて、この取り組みを地域全体で活かしていくことができるよう努めてまいりたいと存じます。
ご答弁ありがとうございました。一度自らのアイデアを形にしている、ポテンシャルを持っている学生たちですから、その視野をさらに広げ、より大きな課題にチャレンジするためのマインド醸成を、スタートアップ支援など本市の別事業とも有機的に接続しながら図っていただくことは、とても重要なことだと思います。ぜひ地に足の着いた、仙台の優位性を活かした次世代人材育成の取り組みを、今後も継続いただきたいと存じます。
(2)MICE推進(令和7年度予算:23億8471万5千円)
次に、「MICE推進」に関連して伺います。令和6年第2回定例会の一般質問では、今後ますます激化する都市間競争の中で本市が「国内外から選ばれるグローバルMICE都市」になるためには、大規模コンベンションの誘致ももちろん重要ですが、ひとつひとつは小中規模でも、参加者の総数としては大規模な学会を上回る、小中規模学会を主催する大学教員・個人にのしかかる負担を、如何に効率的に軽減できるかという観点が、持続可能なグローバルMICE都市の実現には不可欠である、との提言をさせていただき、学会を主催する研究者からの具体的な要望やニーズを取り上げさせていただきました(参照:https://kokoroyutaka.net/parliament/20240618.html)。
その要望を受け、まず「会場選定時の見積もりに時間がかかり過ぎることが学会主催者の負担になっている」と改善要望のあった問題については、関係各位から早速ご対応いただき、開催規模に応じて大凡の予算規模パターンがわかるページを新たにご作成いただき、仙台国際センターのHPに掲載いただきました。学会主催者の負荷軽減につながるものと期待できます。ご対応ありがとうございました。

【写真2】一般質問をきっかけに新設された学会の開催規模に応じて大凡の予算規模パターンがわかるWebページ(仙台国際センターHPより)
さらに本市初の試みとして、従来の本市支援メニュー紹介のみにとどまらず、学会主催者のニーズを直に探るとともに、学会開催のノウハウを共有することで、これから学会を主催する大学教員を支援することを目的に、学会主催者情報交換会が本市の主催で今年1月下旬に東北大学を会場に開催され、私も陪席させていただきました。

【写真3】一般質問をきっかけに本市初の試みとして開催された学会主催者情報交換会のようす(2025年1月、東北大学)
学会主催者情報交換会では、国際会議開催経験豊富で本市支援メニューの利用実績も多いベテラン研究者2名が招聘され、公募の結果、修論審査で多忙な時期にもかかわらず、これから学会をオーガナイズする大学関係者ら11名が参加しました。
当日は予定時間を大幅に超過して、学会開催で苦労した点や成功談、大小様々な悩みやアドバイスが共有されたほか、本市の支援や補助に対する様々な要望や希望も寄せられました。改めて、学会主催者からの強い支援ニーズを感じたところです。
① 学会開催ノウハウ共有の支援
そこで伺います。まず、今回のように、学会主催者の様々な悩みを経験豊富なベテラン研究者に直に相談できる場の創出は、学会主催者の負担軽減に資する、有意義な場だったと評価できると思います。経験豊富なベテラン研究者が多く在住しているという本市の強みを活かし、今後とも機会を捉えて、本市支援・補助メニューの紹介に併せて、学会開催のノウハウまで共有できる場を、本市の支援策として継続することは、本市への学会誘致の有効策になることが期待できると考えますが、如何でしょうか。担当局のご所見を伺います。
答弁 Answer
文化観光局 誘客戦略推進課長
学会などの経験やノウハウを共有する場を持つことは、新たな学会等の誘致や、将来の主催者育成にもつながり、MICE推進においても効果があるものと考えております。今回の情報交換会を通して、実際に本市の支援制度の利用につながった事例も生まれ、ご好評もいただいておりますことから、来年度以降も会場視察ツアーなど新たな取組みも盛り込みながら、さらに有意義な場となるよう努めてまいります。
ぜひ、小中規模学会を主催する大学教員・個人にのしかかる負担を、効率的に軽減できる工夫を、これからも現場からのニーズを踏まえ、お願いしたいと存じます。
② 持続可能なMICE開催都市(MICE施設の受入環境強化)
また、件の学会主催者情報交換会では、近年、国際会議を誘致する上で開催地に求められるようになったサステナビリティを、会場の機能として、新たに求めるニーズも多数寄せられました。例えば、飲料水の提供はウォーターサーバー等の持続可能な方法で行う、託児スペースや祈祷スペースの設置などダイバーシティへの配慮、仙台駅から会場までのアクセスに必要な日本語以外の他言語やアイコンでの案内表示などです。
近年ではISO20121など、イベント産業の持続可能性をサポートするためのマネジメントシステムが導入あるいは参考にされ、学術団体が国際会議の開催都市を選定する際も、会場やアクセス、観光魅力などの従来の基準に加え、サステナビリティが重視されるようになりました。
ちょうど、本市を代表するMIEC施設である仙台国際センターが今年4月から大規模改修工事に入ります。本市が目指す「国内外から選ばれるグローバルMICE都市」になるには、これを機に、昨今の国際会議で求められるようになった水準に、仙台国際センターを、ハードとソフトの両面からアップデートする必要があるのではないでしょうか。
海外のMICE先進都市では、このトレンドをいち早く捉え、必要な対応を始めています。Green Cityとしての定評を得ているシンガポールやバンクーバー、ヨーテボリ、2019年には東京が、持続可能なMICE開催に関するガイドラインを策定し、都市個性を活かした幅広い取り組みを展開しています。これらの取り組みは、持続可能な都市としてのブランディングにも役立っています。
本市として、「世界に誇れる新しい杜の都 “The Greenest City” Sendai」と総合計画で標榜しているのであれば、当然のことながら、今回の仙台国際センター改修を好機と捉え、持続可能なMICE施設にアップグレードするものと存じますが、そのような理解でよろしいでしょうか。伺います。
答弁 Answer
文化観光局 誘客戦略推進課長
今回の大規模改修では、授乳室や祈祷スペースの新設のほか、各設備のエネルギー効率の向上や、ウォーターサーバーの設置など、ダイバーシティや環境負荷低減の観点からの環境整備も行う予定でございます。国際会議の会場選定においては、持続可能性という観点がますます重視されるようになってきており、仙台国際センターにつきましても世界に選ばれるMICE施設となるよう取り組んでまいります。
ぜひこれからも現場から求められているニーズにフレキシブルにご対応いただきながら、持続可能なグローバルMICE都市の実現を目指していただきたいと存じます。私からの質問は以上です。
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