令和8年第1回定例会 3月9日 予算等審査特別委員会(統括質疑) 心豊かな社会をつくる会 大草よしえ 質疑
自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステム構築にむけた行政の役割とは
私からは、第1号議案 令和7年度仙台市一般会計補正予算案 歳出 第6款 経済費、及び、第14号議案 令和8年度仙台市一般会計予算案 歳出 第6款 経済費のうち、「起業家・スタートアップ支援事業費」に係る予算に関し、先日の予算質疑の内容を踏まえ、総括質疑を行います。
仙台市のスタートアップ支援に対する基本的な考え方
本市のスタートアップ支援事業について、私はこの1年間、ご当局や関係者の皆さんにヒアリングを重ねてまいりました。その結果、ようやく本市のスタートアップ政策の全体像を把握できたと考えております。
スタートアップ・エコシステムの形成にむけて、本市が担おうとしている役割は、大きく三つに整理できると認識しております。
第一が、まずは旗振り役です。
そもそも行政が担うべき役割とは何か。本市が認定を受けている内閣府のスタートアップ・エコシステム拠点都市の内閣府担当者に確認したところ、民間企業や大学など、多様なステークホルダーを巻き込むにあたり、信用度の高い行政機関が旗振り役となることで、エコシステムの高度化や発展が期待される、とのご説明でした。旗振り役については、本市職員の皆さんが熱意を持って機運醸成に取り組んでおり、内外から一定の評価を得ているものと、私も認識しております。
第二は、エコシステム・ビルダーとしての役割です。
縦割り構造を打破し、産・学・官・金が立場を越えて連携しながら、共に創る「共創」を進める。そのためのコーディネーター役であるエコシステム・ビルダーも、本市が担おうとしているものと理解しております。前回の一般質問でも指摘させていただいた通り、本市がエコシステム・ビルダーを自認する以上、相応の責任を負うべきとの声は、改めて、エコシステムのプレイヤーから多数寄せられているところですので、まずは最終ゴールであるKGIが未設定という問題に、早急に取り組んでいただくことを、ここでも改めて求めておきます。
そして、第三が、本日のメインとなる論点になりますが、スタートアップ個社の成長そのものにコミットする伴走支援の役割です。
本市の「スタートアップ支援環境整備」施策をよく見てみると、制度づくりや場づくりといった一般的な環境整備にとどまらず、スタートアップ個社の成長そのものに踏み込む伴走支援に、近年、比較的多くの予算が割かれていることが読み取れます。実際に、先日の予算質疑でも、支援したスタートアップの成長を、ご当局の内部でKPIとして設定し、委託事業の評価を行っているとのご答弁でした。
では、何のために本市はスタートアップ個社の成長支援を行っているのか。これまでのご当局へのヒアリング結果から判断する限り、仙台市のスタートアップ支援の考え方は、おおむね次のように整理することができると思います。
まず、仙台市が内閣府に提出した計画書によりますと、本市が5年後に目指すスタートアップ・エコシステム像とは、スタートアップが地域で成長し、成功したスタートアップが、次の世代のスタートアップを地域で育てていく。この循環が自律的にまわることを、本市はゴール像として独自に定義しています。
なお、「本市独自の定義」と申し上げた根拠は、一般的には、内閣府の戦略にも書かれているように、エコシステム構築の中心となるのは、スタートアップではなく、エコシステム・ビルダーだからです。エコシステム・ビルダーの多様性が増すほどエコシステムは高度化・発展するとの考え方に基づくためです。
話を戻しますと、仙台市の考え方として、エコシステム構築の中心はスタートアップと、独自に定義しているために、そのロールモデルを、まずは、地域から輩出する必要がある。最終的には、行政の手厚い支援がなくても回る自律的なエコシステムにする必要があるが、民間に委ねるだけでは、スタートアップに地域に残ってもらえる保証はないので、地域に残ってもらえるよう、行政がスタートアップ個社の成長を支援する必要がある。
こうした考え方のもと、行政が、スタートアップ側のニーズを最優先にする「スタートアップファースト」で施策を組み立てていくことには、妥当性がある。というのが、これまでのご当局へのヒアリング結果から当方が把握した、本市の基本的なロジックであり、このロジックに基づいた制度設計であると理解しております。
【問題1】理想像の実現を担保する制度設計が見当たらない
しかしながら、私がこの1年間、スタートアップ・エコシステムの関係者にヒアリングを重ね、調査を行った限り、仙台市の制度設計には、重大な欠陥があると認識しております。
それは、仙台市が言うような、成長したスタートアップが次世代のスタートアップを仙台で育てる保証が、そもそもどこにあるのか、という根本的な問題があるからです。
というのも、これまでスタートアップの皆さんにヒアリングを重ねた結果、「仙台市の手厚い支援には感謝している。しかし、より高く評価してくれるところがあれば、そちらに移るのはスタートアップとして当然の経営判断だ」との意見が多数でした。
そのため、先日の予算質疑において、仙台市の税金を使う以上、仙台市に本社を置く意思のないスタートアップを支援することは問題であることを指摘し、仙台市に本社を置き続ける意思を支援条件に加えるといった制度設計の見直しを求めましたが、ご当局からのご答弁は、都市間競争を理由に、消極的なご答弁でした。
すなわち、スタートアップからは仙台市に残る意思も聞かれず、さらには制度設計として、仙台市本社の要件追加も本市は見直さない。となれば、仙台市の描く理想像は、まさに、絵に描いた餅ではないでしょうか。この一点だけをもってしても、制度設計上、重大な欠陥があると言わざるを得ません。
【問題2】リスクとリターンの関係が極めて不均衡
ここで改めて一般論を申し上げますと、そもそもスタートアップとは、既存のビジネスモデルによって着実な成長を目指す、通常の起業とは全く性質が異なり、既存にはないビジネスモデルにより新たな市場を切り拓くことで短期間での急成長を狙う、挑戦的な存在です。
スタートアップ・エコシステムの核となるプレイヤーは、起業家と投資家の2者です。投資家はスタートアップへの出資を引き受ける代わりに株を取得し、短期間でスタートアップを急成長させるために、自らの資金のみならず、人材やノウハウ、人的ネットワークなどをスタートアップに投入します。
スタートアップが成長しなければ投資した分、投資家は丸々損をしますが、一部のスタートアップでも大成長すれば、株を売ることで莫大なリターンを得ることができる、極めてハイリスク・ハイリターンな、最もシビアな、経済活動です。
だからこそ、投資家はシビアに目利きもするし、自らのリソースを割くからこそ、必死になって支援をするわけです。失敗のリスクは高く、うまく行かない場合も多いですが、うまく行った時にはその損を上回る、リスク相応の莫大なリターンを得られるので、ビジネスとして成り立つわけです。
つまり、スタートアップ・エコシステムとは、スタートアップと投資家を核に、それぞれのプレイヤーが、各々のリスクとリターンを背負い、それが経済合理性に則った時に成立するものです。
一方で、本来は、投資家のビジネス領域であるスタートアップ個社の成長支援を、行政が税金で担うと、どうなるでしょうか。
もともとスタートアップ個社の成長支援は、行政の専門外であるため、シビアな目利きの経験があるはずもなく、その上、失敗のリスクを誰が負っているのか、という意思決定が、極めて不明瞭です。民間ならば、その金銭的なリスクと責任を民間自身が負っているわけですが、仙台市の税金を使うということは、つまり、そのリスクを市民が間接的に負わされている状態になるわけです。
では、そのリスクに対するリターンは何かといえば、なんと、「仙台市にスタートアップが残ってくれたらいいな」、かつ「そのスタートアップが次の世代のスタートアップを仙台で育ててくれたらいいな」という、あるかどうかわからない期待のみ。リスクとリターンが全く見合っていないのが現状です。
仮に、仙台市がファンドを立ち上げてスタートアップの株を持つのであれば、まだリスクとリターンが見合う領域があるかもしれないので議論の余地はあると思いますが、そうはなってはおりません。ましてや、仙台市の税金を使う以上、本社を仙台市に置き続ける意志すらないスタートアップに支援を行うなど、あり得ないのではないでしょうか。
【問題3】民間参入を阻害する逆インセンティブが働いている
さらに、行政が本来民間のビジネス領域を担うことによる、別の弊害も指摘されています。
本来であれば、スタートアップは、自社の株を渡す代わりに、投資家から、資金や支援を得られるという、リスクとリターンで成り立つ関係です。そのリスクを行政が肩代わりすることは、もちろんスタートアップ側から見れば、ノーリスクで非常に有り難いことですが、それは、民間のビジネス領域を、行政が圧迫することに他なりません。
現状のままでは、民間の参入を阻害する、逆インセンティブが強く働いている状況と認識しております。現に、地域のプレイヤーからも、仙台市を競合とみなし参入を避ける民間の声や、「民業圧迫だ」と批難する声は、少なくありません。
さらには、エコシステム・ビルダーとして、地域のプレイヤーを最大限活かすことよりも、本市はスタートアップファーストの考え方を優先して、主に東京のコンサルティング業者に外注している結果、地域のエコシステムにノウハウや社会関係資本がストックされないフロー型の制度設計になっている問題については、以前の一般質問(リンク)でも指摘させていただいた通りです。
すなわち、仙台市は、最終的には「自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステムを目指す」と謳っているにも関わらず、結果として、エコシステム形成を阻害する方向にバイアスがかかっている状況であると認識しております。本市のスタートアップ施策は、目指していることと実際の施策が、矛盾しているのではないでしょうか。
以上のことから、質問をさせていただきます。
Q1 本市は、このような制度設計によって、本当に自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステムの構築が可能であると考えているのでしょうか。市長にご所見を伺います。
答弁 Answer
経済局長
本市が目指すエコシステム、すなわち、民間が主体となって持続的にスタートアップが生み出される環境を形成するためには、産学官金を巻き込み、地域にノウハウを蓄積していくことが重要と考えておりまして、この間、取り組んで参りました。本市では大学発スタートアップが生まれる素地はありますが、その成長を支える投資家や支援機関が十分とは言えず、現時点では行政の関与が必要な状況と認識しております。そのため、支援先が行政依存に陥ることなく、自助努力で成長できるよう留意しつつ、相談対応や事業成長に向けた助言、製品の実証機会や販路拡大にむけたビジネスマッチング機会の提供などに鋭意取り組んできたところでございます。
加えて、東北大学発であることの誇りや仙台への愛着から、本市を仙台に置き、仙台から世界を目指す支援先も少なからずございますし、株式公開に成功した支援先スタートアップが、本市プログラムにおいて後輩経営者に助言をする事例や、仙台にゆかりのある首都圏の起業家などが地元に貢献したいと支援を申し出ていただき、スタートアップへのメンターになっていただいたりという、エコシステムの自走化に向けた芽が着実に出てきております。今後とも、産学官金が連携しながら、地域経済の活性化に資するエコシステムの形成を促進する取組を鋭意進めて参りたいと存じます。
いずれにせよ、本市の制度設計には、根本的な問題があると、当方は認識しております。それでは、本市はこれらの施策を推し進めることで、支援事業終了後に、税金なしでも回る、自律的で持続可能なエコシステムができると考えている、という理解でよろしいですね。
Q2 とはいえ、本市は、スタートアップ・エコシステムにおいて、行政として第一に求められている旗振り役、そして第二に、本市も担おうとしているけれども足りないことが指摘されているエコシステム・ビルダー役に徹するべきではないでしょうか。つまり、行政は黒子に徹し、民間主体の活動を引き出すことこそが、行政の得意分野であり、本来の役割ではないかと考えます。予算配分もそのような考え方に基づくべきと考えるものですが、最後に、予算編成権を有する郡市長にご所見を伺います。
答弁 Answer
市長
本市が目指すエコシステム、すなわち、民間が主体となって持続的にスタートアップが生み出される環境を形成するためには、産学官金を巻き込み、地域にノウハウを蓄積していくことが重要と考えておりまして、この間、取り組んで参りました。本市では大学発スタートアップが生まれる素地はありますが、その成長を支える投資家や支援機関が十分とは言えず、現時点では行政の関与が必要な状況と認識しております。そのため、支援先が行政依存に陥ることなく、自助努力で成長できるよう留意しつつ、相談対応や事業成長に向けた助言、製品の実証機会や販路拡大にむけたビジネスマッチング機会の提供などに鋭意取り組んできたところでございます。
加えて、東北大学発であることの誇りや仙台への愛着から、本市を仙台に置き、仙台から世界を目指す支援先も少なからずございますし、株式公開に成功した支援先スタートアップが、本市プログラムにおいて後輩経営者に助言をする事例や、仙台にゆかりのある首都圏の起業家などが地元に貢献したいと支援を申し出ていただき、スタートアップへのメンターになっていただいたりという、エコシステムの自走化に向けた芽が着実に出てきております。今後とも、産学官金が連携しながら、地域経済の活性化に資するエコシステムの形成を促進する取組を鋭意進めて参りたいと存じます。
スタートアップは、イノベーションを創出して、若い人たちのチャレンジを促進する存在であると思っておりまして、この間、仙台の地域経済成長のエンジンと位置付けて、東北、仙台から世界にむけて、支援を行ってきたところでございます。こうした本市の取組は、世界に伍する日本経済を目指す、国の政策とも合致をして、エコシステム拠点都市として選定をされたところでございます。 先ほど、局長からも答弁ありましたけど、実際に、仙台から世界を目指す支援先も少なからずあり、また、株式公開に成功した支援先スタートアップが、本市のプログラムでまた、後輩の経営者に助言をする事例、あるいは、仙台に拠点を移される事例等々もございます。行政の手厚い支援には頼らない、自律的、持続可能な支援が、エコシステムの理想ではありますけども、現状、まだそこにすっかり至っているということでもないわけでして、産学官金が連携して支援していく枠組みは必要というふうに考えております。引き続き個別支援も含めた支援を展開しつつ、自走できるエコシステムの形成に意を持ちながら、各般の取組を進めて、仙台・東北の持続的な成長に繋げて参りたいと存じます。

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