2026.09.14 議会質問報告

【令和8年第3回定例会】本会議(一般質問)「真に『選ばれる都市』の条件とは 〜仙台固有の歴史が切り拓く未来〜」

概要 Summary

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえは、「科学・技術の地産地消」をスローガンに掲げ、地域の知的資源が教育・経済・まちづくりに循環するエコシステムの構築を目指しています。本市が真に「国内外から選ばれる都市」となるためには、他都市には真似できない仙台固有の歴史と伝統を再評価し、市民の誇りへとつなげることが不可欠です。今回の質疑では、本市が「科学技術発祥の地」である歴史を一例に挙げ、歴史的価値の活用と最先端分野への投資を両輪として、今後の各施策に取り入れるべきと提言いたしました。これに対し、担当局からは前向きな答弁を得たほか、経済局や教育局からは、これまでの提言を踏まえて具体的な取り組みが進められている旨の答弁がありました。さらに、他の議員や市職員の方々からも「仙台にそのような歴史があるとは知らなかった」と反響をいただいております。
 以下に、大草よしえの一般質問の録画中継(仙台市議会HPリンク)、質問内容及び市長等の答弁(全文)を掲載いたします。

録画中継はこちら

令和8年第3回定例会 9月14日 本会議(一般質問) 心豊かな社会をつくる会 大草よしえ 質疑

真に『選ばれる都市』の条件とは 〜仙台固有の歴史が切り拓く未来〜

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。私からは、郡市長が掲げる「国内外から選ばれる都市」について、お伺いいたします。

仙台は現代社会の土台となった科学技術『発祥の地』

 一昨日の9月12日、仙台市名誉市民である故・西澤潤一博士が、生誕100周年を迎えられました。ご存知の通り、世界的に「ミスター半導体」「光通信の父」と称えられた西澤博士がここ仙台で生み出した研究成果は、現代デジタル社会の強固な土台となっています。

 現在、生成AIの普及に伴う「電力消費」と「データ渋滞」が世界的な課題ですが、その解決の鍵を握る最先端科学技術の『発祥の地』こそが、まさに仙台です。大電力を効率よく制御するパワー半導体の先駆け「PINダイオード」や超高速トランジスタ「SIT」の発明。さらに、インターネットの根幹である光通信の「光を出す・通す・受け取る」という基本3要素を世界に先駆けて提案したのも博士であり、本市は「光通信発祥の地」でもあります。加えて、省エネ社会に欠かせない「高輝度発光ダイオード」の実用化への道も切り拓くなど、「ノーベル賞級」と言われる数々の独創的な成果を挙げられました。

 現代のAIブームの中心はシリコンバレーに見えますが、その物理的システムを成り立たせているのは、数十年前のここ仙台で蒔かれた科学技術の種であることは歴史的事実です。世界最大の学会「米国電気電子学会(IEEE)」は、西澤博士を「20世紀の天才」と称え、その名を冠した「西澤潤一メダル」を永久創設しました。これはエジソンらに続く世界で13番目の栄誉であり、博士の業績が、如何に国際的に高く評価されているかを示しています。たとえ海外で「仙台」の知名度は低くとも、西澤博士の名は世界の未来を拓いた偉人として、世界的に知れ渡っています。

 さらに博士は、個別の発明のみならず、1987年に提唱された「東北インテリジェント・コスモス構想」を牽引されました。日本が後追い型から脱し、東北から世界へイノベーションを生み出そうとしたこの画期的なムーブメントは、今日のナノテラスを核としたリサーチコンプレックス形成の源流となっています。

廃棄寸前だった「世界第一号のLED赤色灯」

 実は私も、学生時代は地域の科学史をよく知りませんでした。18年前、「科学とは何か」を知りたいと思い、数百人の研究者を訪ね歩いた際、西澤先生のご自宅にも何度も通い、「独創」のお考えや歴史を直にご教示いただきました。その中で伺ったのが、世界で初めて「高輝度発光ダイオード」の開発に成功された際のエピソードです。

 西澤先生は、当時を振り返り、こうおっしゃいました。「当時のLEDは、エレベーターの数字表示に使われる程度の暗さだった。我々が開発したLEDは、屋外でもはっきりわかるほど明るく、しかも省エネで長寿命である。これを市民に知ってもらうため、世界第一号のLED赤色灯を、仙台市の青葉消防署片平出張所に寄贈したのだ」と。私はその足で、すぐ消防署へ確認に向かいました。しかし、返ってきたのは「わからない」という回答でした。

 それから時が経ち、今から2年前のことです。「あのLED赤色灯が、価値も知られないまま廃棄されてしまうのではないか」。急に不安に駆られた私は、仙台市に改めて確認をしました。すると驚いたことに、「半年後に廃棄予定」と告げられたのです。確かめようにも、庁内には当時の資料が残っていませんでした。しかし、千葉消防局長のご尽力により、役所の外で当時の記録が発見され、仙台市科学館での保管・展示へとつなぐことができました。千葉消防局長をはじめ、ご尽力いただいた関係各位に、この場をお借りして感謝を申し上げます。

【動画】西澤潤一博士から仙台市青葉消防署・片平出張所に寄贈され2025年3月まで現役で稼働していた「世界第一号のLED赤色回転灯」(2025年3月 大草よしえ撮影)

【図1】仙台市科学館で無事保管・展示されることとなった西澤潤一博士寄贈「世界第一号のLED赤色回転灯」(2025年4月 大草よしえ撮影)

 このように、歴史は知られなければ消えてしまいます。しかし、活かせばその都市にしかない圧倒的な価値になります。

科学者と市民の共創で、科学が文化に昇華した「学都仙台」を象徴するモミの木

 さて、現在、本庁舎の建て替えに伴い、本庁舎と定禅寺通を結ぶ市道の再開発が進められています。皆さんは、一番町四丁目商店街の定禅寺通沿いに、1本のモミの木があるのをご存知でしょうか。実はこれ、今から41年前の昭和60年、西澤博士が仙台市名誉市民記念として植樹したものです。しかも、ただのモミの木ではありません。今や全国的に有名な冬の風物詩「SENDAI光のページェント」が生まれるきっかけの一つとなったモミの木です。

【図2】「SENDAI光のページェント」誕生の契機とされる西澤潤一博士植樹のモミの木(写真中央)

 きっかけは、1970年にまで遡ります。当時、西澤博士が「半導体研究所の存在を市民に知ってもらおう」と、川内にある研究所のモミの木に、博士が開発した赤や緑のLEDの「Merry X'mas」プレートと電球を組み合わせてクリスマスツリーの飾り付けを始めたのが最初でした。西澤博士がアメリカ出張の際、現地では庭のモミの木を飾って聖夜を祝う様子をご覧になり、職員の方々と手弁当で始められたそうです。これを見て感銘を受けた商店街の皆さんが「自分たちの街でも飾りたい」と相談され、西澤博士から寄贈されたのが、このモミの木です。博士がノウハウを提供して研究所の職員の皆さんも飾り付けを手伝い、翌1986年、『光のページェント』が誕生しました。市民ボランティアによる大規模なイルミネーションとしては先駆的な取り組みで、世界で4番目、日本で2番目に長い歴史を持つと聞いています。

 地域から生まれた最先端の研究成果が、研究者と市民との共創で、地域の文化にまで昇華した。これは、全国的に見ても、極めて稀有な事例です。まさに、このモミの木は、科学が文化に昇華した、「学都仙台」のストーリーを体現する、重要なシンボルツリーです。

 ところが数年前、西澤潤一博士記念植樹の看板が撤去されたこともあり、このモミの木が博士による植樹で、「光のページェント」誕生のきっかけにもなったことを知る市民は、大変残念ながら、ほとんどいないのが現状です。

 そんな中、新本庁舎周辺の再開発に伴い、このモミの木が伐採される可能性を耳にしました。慌てて、「新本庁舎検討会」の報告書を確認したところ、完成予想図からは、モミの木の姿が消えています。このままでは、廃棄寸前だったLED赤色灯の時と同じように、その価値が知られないまま、歴史が失われてしまいます。

【図3】「新本庁舎検討会」報告書のイメージパース(完成予想図)にモミの木の姿はない

 しかしながら、このモミの木は、仙台が光り輝くまちであり続けるためには、絶対にあるべき財産です。むしろ、「学都仙台」のストーリーを語る貴重なキラーコンテンツとして、今こそ歴史を再評価し、再開発すべきです。

「国内外から選ばれる都市」の真の原動力とは何か

 郡市長は現在、「国内外から選ばれるまち」を目指し、「イノベーション都市」や「観光MICE都市」としての飛躍を掲げておられます。これは本市の未来にとって極めて重要です。しかし、真のイノベーションや、国内外から人々を惹きつける魅力は、新しい箱物をつくることやトレンドを追うだけでは生まれません。

 仙台が真に「選ばれる都市」となるためには、最先端への投資はもちろん必要ですが、その両輪で、足元の歴史の継承がなければなりません。歴史的文脈という「その土地ならではの固有性」を欠いた表面的な都市間競争は、結局のところ、予算の掛け合いという、画一的で不毛な消耗戦に陥り、資本力に勝る他都市にいずれ埋没します。地域固有の歴史という「揺るぎない土台」を今の時代に活かしてこそ、巨額の投資は初めて「仙台ならではの価値」に昇華され、圧倒的な優位性を生み出すものと考えます。

 しかしながら大変残念なことに、これまで議会でも指摘させていただいた通り、現在の本市の姿勢からは、この歴史を引き継ぎ、未来に活かしていこうという気概が十分に感じられません。仙台市名誉市民の業績をたった一言ずつしか解説していない扱い(https://kokoroyutaka.net/parliament/20250618.html)、廃棄寸前だった「世界第一号のLED赤色灯」、そして今回のモミの木が、その象徴です。

 本市が真に選ばれる都市となるには、他都市が真似しようとしても絶対に真似できない「仙台ならではの歴史と伝統」を再評価し、市民の誇り、アイデンティティとして、循環させることが不可欠です。しかも、先人たちの知恵と市民の情熱が交差した「仙台らしさ」の再評価は、多大な予算をかけずとも今すぐ取り組める、極めて費用対効果の高い、差別化戦略なわけですから、取り組まない理由はないのではないでしょうか。

 今回、具体例の一つとして、「科学技術の発祥の地」を取り上げさせていただきました。つい遠い世界のことと思われがちな、科学技術。それが実は、この「自分たちの土地」から生み出されたものであることを、知っているか、否か。同じ学びであっても、湧き上がる興味や愛着は、全く異なるものになります。そして、この「生きた実感」こそが、自らが「次なる創り手」となる勇気を育み、次代を切り拓く挑戦心へと直結していくのです。

 アウターブランディングの基盤には、市民自身が自らの土地に誇りを持つインナーブランディングが不可欠です。イノベーションが生まれてきた仙台の歴史とともに、その精神性を次世代へと受け継いでいく。これらを、世代を超えて引き継ぎ、地域に文化として根付かせていくためは、息の長い取り組みが必要です。その地道な積み重ねこそが、他都市には真似できない都市個性を醸成し、次なるイノベーションを生み出す、豊かな土壌となります。このような「科学・技術の地産地消」が、ひいては真に「選ばれる都市」の何よりの原動力になるのではないでしょうか。

質問

 そこで、お伺いいたします。本市が真に「国内外から選ばれる都市」を目指すのであれば、まずは、このモミの木に象徴されるように、本市の歴史的価値を再評価し、経済や教育など、様々な横断領域で、次なる価値創出へ繋げる施策を再考すべきと考えます。

Q1(財政局): 本庁舎建て替えおよび周辺再開発のプロセスにおいても、このモミの木に代表される「歴史的価値の再評価と活用」という観点を取り入れるべきと考えるものですが、ご当局のご見解を伺います。

Q2(経済局、文化観光局、教育局):また、このような本市発祥の歴史的価値を、本市の優位性を示すキラーコンテンツとして積極的に施策に活用していく観点について、経済局、文化観光局、教育局、それぞれにご見解を伺います。

Q3(市長):最後に、再開発による新しいハード面の整備と並行して、私たちの足元にある仙台ならではの歴史を再評価し、新たな光を当てることで、本市の都市個性を引き出すアプローチについて、市長のご見解をお伺いして、私からの一般質問を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。

答弁 Answer

市長

 ただいまの大草よしえ議員のご質問にお答え申し上げます。都市個性を引き出すアプローチについて、でございます。先人たちによる先導的な科学技術など、学都としての知の集積は、本市の歴史や文化を土壌として育まれてきたものであり、都市個性を形づくるとともに、このまちの魅力の源泉となっています。こうした本市の強みを次の世代へと受け継ぎながら、豊かな自然や都心の魅力、さらには音楽をはじめとする文化芸術といった未来に繋がる新たな価値の創造を目指して2036年プロジェクトを推進しております。今後とも、都市の更新と、本市が誇る財産の継承を掛け合わせながら、国内外から選ばれる都市の実現に取り組んでまいります。その他のご質問につきましては関係の局長からご答弁申し上げます。私からは以上でございます。

答弁 Answer

財政局長

 市役所本庁舎の建て替え、および周辺再開発に係る歴史的価値の再評価と活用について、でございます。市役所本庁舎の建て替えや新本庁舎低層部と周辺の公共空間との一体的な利活用に係る検討におきましては、これまでご指摘のモミの木のありようについて特段の議論は行ってこなかったところでございます。今後の一体的利活用の検討にあたりましては、モミの木も含め、歴史的価値を有する資産の再評価や活用といった観点も含めながら、関係各局とも連携し、このエリアの賑わい創出や魅力向上に繋がるよう取り組んでまいりたいと存じます。以上でございます。

答弁 Answer

経済局長

 先人たちの科学技術分野における業績の発信についてお答えさせていただきます。本市ゆかりの研究者の功績等を周知し、次世代へと継承させていくことは、本市の研究開発力の高さを示す上で重要なものと考えております。 現在、リサーチコンプレックス形成に関するウェブサイトにおきまして、先人たちの業績や産学連携の歩みを紹介しており、今後もこうした特色を積極的に発信し、科学技術への関心醸成やイノベーション創出に繋げてまいります。以上でございます。

答弁 Answer

文化観光局長

 文化観光局におけます本市発祥の歴史的資源の活用につきまして、お答えいたします。 本市で生まれ歴史的価値の高い資源を観光に活用することは、仙台ならではの魅力として、誘客に効果的であると認識しております。例えば、作並は鉄道の交流電化発祥の地でございまして、その技術がその後の鉄道の飛躍的な発展に繋がっていることなどを観光マップ等で紹介しているところでございます。こうした歴史的資源を観光に生かしますとともに、MICEの誘致時のPRに活用するなど、ターゲットの興味・関心を踏まえた魅力の発信により交流人口の拡大に努めてまいります。以上でございます。

答弁 Answer

教育局長

 私からは、歴史的価値の活用について教育局に係るお尋ねにお答えいたします。世の中に影響を与える科学技術が自分の生まれ育った町が発祥であると知ることは、児童・生徒が科学への関心や興味を持つきっかけとなるものと認識しております。例えば、科学館のエントランスでは、名誉市民を初めとした仙台にゆかりの深い科学技術者の説明展示を行っているほか、市内全ての中学2年生を対象とした科学館学習においても、本市発祥の科学技術を紹介しているところでございます。今後とも様々な取り組みを通じて、本市発祥の歴史的価値が学びに繋がるよう取り組んでまいります。以上でございます。