2026.09.18 議会質問報告

【令和8年第3回定例会】決算等審査特別委員会(第3分科会)「数字で質すスタートアップ支援事業の実態。自走化に向けた最終ゴールも地元へのノウハウ蓄積もないまま予算9割が域外流出」

概要 Summary

 決算等審査特別委員会とは、前年度の会計決算などを専門的かつ詳しく審査するために設置される特別委員会です。決算年度(令和7年度)は、施政方針で市長が「グローバル・スタートアップ都市・仙台」を掲げ、関連予算も倍増させた年でした。そのため、大草よしえは、スタートアップ支援事業について、数字と事実に基づく客観的な質疑を行いました。
 徹底したデータ追及の結果、本市は「自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステムの形成」を掲げながらも、それに向かう最終ゴール(KGI)も出口戦略も設定されておらず、さらには地元へ専門ノウハウを蓄積する仕組みも予算もないという客観的な実態を公式答弁として引き出し、事業の構造的欠陥を明らかにしました。
 ここまでの質疑を踏まえ、決算等審査特別委員会の全体会では市長に対してスタートアップ支援事業に関する質疑(全体会へのリンクはこちら)を行い、事業設計の抜本的見直しを求めて決算の認定に反対しましたので(反対討論へのリンクはこちら)、併せてご覧ください。

録画中継はこちら

令和8年第3回定例会 9月18日 決算等審査特別委員会(第3分科会) 心豊かな社会をつくる会 大草よしえ 質疑

スタートアップ支援事業

 私からは、第6款 経済費のうち、「スタートアップ支援事業」について伺います。

 私はこれまで約2年にわたり、本市のスタートアップ施策について、関係者へのヒアリングと調査研究を重ねて参りました。本市が旗振り役となり、この地域のスタートアップ・エコシステム形成の機運醸成に貢献していることについては、内外から一定の評価が得られているものと認識しております。しかし一方で、本市が「自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステム形成」を掲げているにも関わらず、そのための最終ゴール(KGI)が設定されていない設計自体に根本的な問題があり、結果として「手段が目的化しているのではないか」という強い懸念の声が地域から寄せられています。本日は決算審査の分科会ですので、この「KGIなき手段の目的化」に対する疑念を前提として、決算年度における客観的な事実と数字を確認させていただきます。

各事業評価の前提となる最終ゴール(KGI)について

【Q1】はじめに、決算年度における主な事業の概要と、決算額に対する定量的な実績(支援企業数、イベント開催数と参加者数など)について、簡潔にお示しください。

答弁 Answer

経済局

【A1】令和7年度の「起業家・スタートアップ支援」事業におきましては、多様な支援メニューを通じて、起業家やスタートアップに対する支援を行い、決算額は、3億6528万円余となっております。スタートアップへの個別集中支援などにより、延べ75者を支援するとともに、グローバルスタートアップイベントをはじめとしたさまざまなイベントを開催し、開催数は70回、その参加者数は延べ5,027人となっております。

【Q2】ただ今ご説明いただいた実績を踏まえ、担当局として、決算年度の事業全体をどのように総括し、内部評価されているのか伺います。

答弁 Answer

経済局

【A2】スタートアップに対する個別の事業の立ち上げや成長支援、資金調達や海外展開など成長に必要な知見の共有など、事業全体として、スタートアップに対する効果的な支援を行うことができたものと評価しております。

【Q3】その内部評価は、具体的にどのような「客観的指標」に基づいて行われたのでしょうか。評価の根拠となった指標をお示しください。

答弁 Answer

経済局

【A3】「起業家・スタートアップ支援」の各事業におきましては、それぞれ具体的な目標値を設定し、成果を評価してまいりました。例えば、昨年度初めて開催したグローバルスタートアップイベントでは、関連イベントを含めて2,000人の参加を目標に掲げたところ、それを上回る2,360人にご参加いただくなど、多くの事業において目標を達成しております。また、こうした定量的な評価に加え、研究開発型スタートアップの集中支援プログラムに採択された複数社が、合計約10億円の資金調達を実現したことなども含め、さきほどのような評価となっております。

【Q4】事業ごとに具体的な目標値、KPIを設定されているとのことですが、最終ゴールであるKGIが未設定であれば、そもそも現在のKPI設定が正しい方向を向いているのか、その妥当性の判断自体ができません。昨年度の議会で、KGI未設定のままKPIが運用されている問題を指摘し、ご当局からは「KGI設定について検討する」旨のご答弁をいただきましたが、その後、本市事業のKGIは明確に設定され、文書化されているのでしょうか。

答弁 Answer

経済局

【A4】本事業のKGIの設定につきましては、仙台・東北のスタートアップや支援者の現状などを踏まえ、事業の評価を行うためにどのような数値の設定が適当であるかについて、内部で議論を進めているところでございます。

 KGIについては現在も検討中とのことですが、最終的な到達目標(KGI)が不在のままでは事業の客観的な評価そのものが成立しません。改めて早急なKGI設定を強く求めます。

 関連して、「仙台・東北スタートアップエコシステム・コンソーシアム」のKGIについても伺います。昨年度の議会でも、本市はコンソーシアムにおけるエコシステム・ビルダー役を自認しているにも関わらず、コンソーシアムとしてのKGIの合意形成を断念したが故の結果として、コンソーシアムが実質的には形骸化している問題を指摘しました(令和8年第1回定例会のリンクはこちら「本市スタートアップ・エコシステムの現状と課題?ゴール(KGI)未設定のまま中間指標(KPI)を運用する構造問題?」)。

【Q5】昨年度の議会では、担当局長から「コンソーシアムとしてのKGIを含め、最終的に目指す姿、それぞれが果たしうる役割等について、早急に議論し合意形成を進める」旨をご答弁いただきました。その後、コンソーシアム全体のKGIは明確に合意形成されましたか。伺います。

答弁 Answer

経済局

【A5】本市が事務局を務める仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアムでは、目指す姿やKGIの設定に向けて、今年度、意見交換会を5回程度開催することとしております。これまで2回の意見交換会を開催し、仙台・東北のエコシステムの目指す姿などについて議論してまいりました。次の第3回においてKGIの事務局素案を提示し、会員間での合意形成に向けて、さらに議論を進めていくという段階でございます。

 KGI策定に向けた具体的なアクション自体は評価いたしますが、本来、KGIの共有はコンソーシアム結成時に完了しているべき事項です。早急かつ実効性のある策定となるよう、確実な取り組みを、改めて強く求めます。

「自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステムの構築」についての検証

 事業評価のために本来あるべきKGIは未設定とのことですが、本事業の検証を行うため、続いて、本市が自認する「エコシステム・ビルダー」の役割について伺います。

 エコシステム・ビルダーの役割は、産学官金が立場を超えて連携し、「ヒト・モノ・カネが自律的に回る仕組みを構築すること」であると、本市も昨年度選定された内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点都市戦略」に明記されています。本市も最終的には「自律的で持続可能なスタートアップ・エコシステムの構築を目指す」と掲げています。

 ただ、本市は「現時点では、地域の力だけですべての事業を実施するのは難しい」という現状認識のもと、主に東京など域外の事業者に単年度で業務を委託しています。

 現段階で地元に不足する要素を補うために、東京など外部の知見を取り入れること自体を否定するものではありません。しかし、地域に「支援ノウハウ」や「社会関係資本」という最重要資産が蓄積されるスキームが予め明確に設計されていなければ、公金による事業終了とともに支援体制が途絶え、結局は一過性のイベントに終始し、地域には何も残りません。

 そのため、これまでの議会でも「フロー型ではないストック型の制度設計」を求め、ご当局からは「業務委託のあり方など工夫してまいりたい」との答弁を得ております(https://kokoroyutaka.net/parliament/20250916.html)。本日は決算審査の場ですので、改めて、ストック型の制度設計について、実質的にノウハウの蓄積がなされているかどうか、具体的に確認したいと思います。

【Q6】まずは、決算年度における業務委託の現状を確認します。全委託事業者について、本社所在地の内訳をお示しください。また、委託金額の総額について、「仙台本社の事業者」と「それ以外の地域の事業者」それぞれの総額をお答えください。

答弁 Answer

経済局

【A6】決算年度におきましては、15の委託事業のうち、5つの事業を仙台に本社を置く事業者に委託いたしました。委託金額の総額につきましては、総額3億1千2百万円余のうち、仙台に本社を置く5社の総額で3千2百万円余、市外に本社を置く10社の総額で2億7千9百万円余でございます。

 全15事業のうち地元事業者への受託は5事業。そして、契約金額においては、総額約3億1千2百万円余のうち、地元への委託は約3千2百万円余と、全体のわずか1割程度にとどまるという事実が確認できました。

【Q7】では、東京など域外事業者への委託事業において、支援ノウハウや社会関係資本を、本市または地元に引き継ぎ・蓄積するための具体的な仕組みは担保されているのでしょうか。また、その仕組みづくりに対して直接投じられた予算はいくらありましたか。

答弁 Answer

経済局

【A7】域外の事業者が受託した事業の成果物やノウハウ、構築したネットワークを地域に引き継ぐための仕組みは設けておらず、予算措置も行っておりません。一方で、域内の支援機関等とのネットワークを有していることを委託事業の応募資格としており、域外の事業者が受託する場合においても、域外の受託者から域内の事業者への再委託が行われるなど、域内の事業者が事業の実施に参画している案件が複数ございます。

【Q8】「域外事業者の成果物やノウハウ、社会関係資本を地元に蓄積するための具体的な仕組みや予算措置はない。一方で、地元支援機関等とのネットワークを有していることを委託の要件としている」とのことですが、それはあくまで入口の条件に過ぎません。事業終了時、単に地元企業が名前を連ねただけでなく、実質的に支援ノウハウや社会関係資本が地元に蓄積されたかどうかについて、市は検収の際、「どのような客観的な証拠をもって」履行確認や評価を行っているのでしょうか。

答弁 Answer

経済局

【A8】委託事業の完了に伴う検収・履行確認におきましては、受託事業者から提出される実績報告書や成果物に基づき、仕様書に定めた各業務の実施状況を確認しております。その際、地域の事業者に再委託が行われた場合におきましては、当該事業者が具体的にどのような役割・業務分担で参画したかについても確認を行っております。

 報告書で仕様書に定めた要件充足の確認を行い、また、域外事業者から地元事業者への再委託も確認を行っているとのことですが、今回は決算審査の場ですので、その実態を客観的な数字で確認させていただきたいと思います。

【Q9】それでは、決算年度における地元事業者への再委託は全何件ありましたか?また、元の委託金額に対する再委託金額の比率、およびその具体的な業務内容について、それぞれお示しください。

答弁 Answer

経済局

【A9】域外の事業者が受託した10の事業のうち、再委託が行われたのは4事業で、市内の延べ6事業者への再委託がございました。これらの事業における、市内事業者への再委託金額の比率と業務内容につきましては、グローバルスタートアップイベント運営事業における比率が30%、再委託業務内容は会場設営・運営業務、仙台スタートアップスタジオ事業における比率が9%、再委託業務内容はウェブサイト保守管理、学生への相談対応及び勉強会の開催、仙台グローバルスタートアップ・キャンパス事業における比率が3%、再委託業務内容は広報及び交流イベント企画、最後に仙台グローバルスタートアップ・ハブ事業における比率が1%、再委託業務内容はウェブサイトの改修でございます。

 ご答弁いただいた通り、再委託金額比率が30%と最も比率の高いグローバルスタートアップイベント(DATERISE!)ですら、その中身は『会場設営・運営業務』にとどまっており、それ以外に至っては、地元事業者への再委託金額の比率はわずか1%から3%、高くても9%に過ぎないとのことです。さらにその業務内容も、ウェブサイトの保守管理など、単なる「作業の切り出し」が大半を占め、事業戦略策定やプログラム設計、成果責任といった中核業務への関与を伴わない周辺業務にとどまっております。これでは、スタートアップ支援の核心である「目利き」や「伴走支援」等の専門ノウハウが、地元に蓄積されているとは言えないのが、この客観的な数字が示す実態ではないでしょうか。

 本日の事実確認により、本市は「自律的で持続可能なエコシステム形成」を掲げながらも、実態としてはそれに向かう「KGI(出口戦略)が設定されておらず」、さらには「地元へのノウハウ蓄積の実効的な仕組みを持たないまま、本市予算の9割弱(約2.7億円)が単年度で域外に流出している」という客観的事実が明らかになりました。本日の事実関係を踏まえ、引き続き、後日の全体会において議論を深めてまいります。私からの質問は以上です。